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後藤 秀孝
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JAPAN
<童話 巨人がみの残したもの>
2007-04-28 Sat 14:35
時は西暦2007年。
パラレルワールドの裏のうら、ここヤンシノ界は神集島(かみつどいじま)でのこと。

現世で言う、てきさす州ほどの大きさのこの島には、住民から「かみ」と呼ばれる存在がたくさんいました。

未来を予言する力を持った、目がみ。
いつも上空はるかから、村びとたちを見守る、鳥がみ。
雨と実りをもたらす、美女がみ。

そんな三人のところに、いわゆる「大深層」地底の牢での刑期をおえて、巨人がみが帰ってきました。

巨人がみ、お茶している三人のところにやってくると、懐かしそうに誰彼かまわず抱きつきます。

美女がみ、たまらずに「あんた年寄りのくせに、力強すぎ。で、どうだったの。元気してた?」といいました。
目がみは、上目づかいに巨人がみを見て、「ずいぶん老けたな」と皮肉をいいます。
鳥がみも周囲を飛びながら、「お勤め、ごくろうさんでした」などといっています。

「ああ、わしも入所当初はどうなることかと思ったよ。」そういって丘に腰かける巨人がみに、お茶を入れる美女がみ。「あそこは地獄からおくられてくる鬼がみや修羅がみ、口達者の狐狸がみが9割だからな。」

「じゃあ毎日ケンカですね。」とつっこむ鳥がみに答えて、巨人がみはこう告げました。「まだまだ若いもんにゃ負けんよ。ベンチプレス118tは地底マスターズでダントツ1位だった。」

他にも、地底でのできごと、また地上の村の様子や、日常の話題、苦労話などに、花が咲きます。

「最近、先祖代々伝わるコンタクトが、割れてしまってな。」目がみはこう切りだしました。「予言の力は失うわ、PCの前で長時間いるからドライアイになるわ、さんざんじゃよ。」
「そんなわしの気もしらず、村人たちはあいかわらず、いくさの勝ち負けとか、競馬とか、カレシとの相性とかを、聞きに来るわけじゃ。」目がみは続けて、「メンツがあるから、答えんわけにもいかん。今はひたすら茶をにごしておる。」と愚痴をいったのです。

「あっしも村人の相談にはへきえきとしてますよ。遠くまで漁にでた船の帰りがおそいと、母親が子連れでやって来て、『鳥がみさま、鳥がみさま。うちのとうちゃんが帰ってきません。ちょっと見てきてください』なんて、頼んでくるんですよ。」鳥がみは続けて、「最近は漁にでる船の数が増えてきて、その管理にストレス感じて、見てください。つばさに円形脱毛症が。」と愚痴をこぼしました。

「私の悩みは、もっと深刻よ。」美女がみはこういって、「さいきん、雨がふらないで不作続きなんだけど、私に祈っても効果ないから、最近村人は『ばある』っていう外国の牛がみを祀るようになっちゃった。腹だたしいやら悔しいやら。」するとその美しい顔が反転して、毛が逆立ち、どす黒いきょうふの顔があらわれました。「『ばある』め、ぶっ殺してやる~。」

「ふぅん…みんな大変だったんだな。」とうなってから、巨人がみ、一冊の本を取りだしました。

興味津々の鳥がみが、巨人がみの肩に止まってのぞきこむと、それは読み古されたぶあつい本でした。
「なんだい、その本。」

「これはな、『ばいぶる』という。」そして、巨人がみは、牢でおきたある日のできごとを、話しはじめたのです。

「山落としの罪で投獄され、まだ入所して間がないころ。おれが獄舎のそうじをしていたときだ。監守から『おまえに面会人だ。』といわれたので、行ってみた。」巨人がみは懐かしむように、遠い目をしました。「すると、ちょうど人間くらいのサイズの、ちっちゃな男が、面会室で待っていた。扉がしまる重い音で、彼はふりむいたんだ。」

「そのころ、おれは他の入所者、鬼がみたちと、関係がうまく行ってなかった。とくに終身刑のマジェンタとシアンの二人ぐみとは、何度も衝突しかかった。いつも後ろを警戒していたし、いらいらしていた時分だよ。」

聞きいる3人組に、巨人がみは続けます。「そんな時、そのかれはおれを見舞いに来てくれた。まったく見ず知らずのおれを。」そして、『ばいぶる』の表紙をなでて、「この本は、かれがくれたものなんだ。」といいました。

表紙をめくると、本のなかはきいろやピンクの線、手がきの文字列やポストイットでいっぱいでした。

「心が荒んで、だれも信用できなかった。そんなとき、『あなたの敵を愛しなさい。』って、かれはいったよ。」巨人がみは「愛」という言葉に少し照れて、続けました。「最初は、『なんだこの部外者は』『食うか食われるかの、牢やの環境がまるで分かっちゃいない』って、思っていた。」
「でも、かれは続けて『わたしたちの神が、あなたを愛しているように、そのように、他人をも、敵をも、愛しなさい。』といって、『ばいぶる』を開き、『ほら、ここに書いてある。』といったんだ。」

「それから、おれとかれの面会は続いていった。かれが話す『神』は、この世界や、おれたちをも造ったんだ。でもおれは最初、『おれがかみなのに、何で他の『神』によりたのまにゃならん?』と思っていた。」
「でも、『力のかみ』って呼ばれてあがめられていたおれも、じつはもう年で腰痛に悩み、膝には水がたまったりしている。昔のように山を動かすのは無理。すでに肉体の限界を感じていたんだ。」

「そんな悩みを聞いて、かれはこういった。『あなたが誰で、これまでどんな生活をおくってきたか。あなたが自分をどう思っているか。そんなことは関係ありません。』

『神はあなたを愛していますよ。』

そして、『そんなあなただからこそ、できる仕事があります。』といってくれた。『見えないものの目を開き、病人に手を置いて癒し、悪霊を退散させること。心傷ついたものをいやし、囚われびとに赦免を告げ、悲しむものをなぐさめること。

そして、そうした奇跡をあなたのために起こしてくれる『神』について、皆に証言して伝え広めること。』」


みんなし~んとなって、聞いています。

「かれから、そしてこの『ばいぶる』からえた知恵は、その後、いろんなトラブルからおれを救ってくれた。」巨人がみはその太い腕をたたいて、「この腕力よりもな。」といいました。

すると、他の三人のかみは、次々と質問します。

目がみが最初でした。「わしのような場合は、どうじゃろう。魔道具を失ったいま、嘘をついてでも予言をするべきじゃろうか?」

「神は、『子どもたちよ。私たちは、ことばや口先だけで愛することをせず、行ないと真実をもって愛そうではありませんか。それによって、私たちは、自分が真理に属するものであることを知り、そして、神の御前に心を安らかにされるのです。』といっている。とりつくろうための言葉や、嘘にたよらないで、お前さんのもっている知識で、村人に益を計ったらどうだ。そうすれば気に病むことはなくなるよ。」

鳥がみが続きます。「漁にでる村人のこと、またもし行方不明がでたとき、村人たちに何を言われるか、そんな心配で夜も眠れないときがあります。最近胃かいようもあるって、医者に言われたし…。高ストレスな役職、私正直、向いてないんですよね…。」

「救世の主は、こういっているな。『すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなたがたを休ませてあげます。』また、『明日のことは明日が心配する。』と。あんまり心配ばっかりしてもしかたないから、神に祈って心配ごとを預けてしまったらどうだい。」

美女がみが最後に、「私最近、怒り、嫉妬、ヒステリーがでることが多いの…。私よりきれい、とか、私より若い、とかで、私より敬われてるかみがいると、つい感情的になってしまって…。キレる私のきょうふの顔を見て、村人がさらに逃げていったわ…。」と告白しました。

聖書にこうある。
『愛は寛大であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。
礼儀に反することをせず、自分の利を求めず、怒らず、他人のした悪を思わず、
不正を喜ばずに真理を喜びます。
すべてをがまんし、すべてを信じ、すべてを期待し、すべてを耐え忍びます。
愛は決して絶えることがありません。』とね。
『自分のほうを向いて!!』というのでなく、愛をもって彼らの方を向いて、彼らの悩みを解決してあげることに、専念すればどうだろう。」

巨人がみのこうした賢い答えは、3人のかみがみを感心させました。「すごい。おれたちの質問への答えが、つまってる本なんだね?」と聞く鳥がみに、巨人がみは笑って答えます。「そう、知れば知るほど、奥が深い本だよ。」

そして、三人のかみがみは、巨人がみのアドバイスに従って、がんばってみました。


するとどうでしょう。以前はおそれ、遠くはなれて、とても他人ぎょうぎだった村人たちが、かれらの助けをありがたがり、喜んで、親しく寄ってくるようになりました。それと共に、3人のかみがみの中にも、にんげんの苦労を知り、かれらを思いやる気持ちが、強くめばえたのです。そこには、以前なかった絆が、確かに生まれました。

目がみは、その豊富な知識と、毒舌で人を笑わせ、助けることが、楽しくなりました。
鳥がみはストレスから脱して、事故の予防策(天候の予知や、ファースト・エイド、海難・危機回避)を漁師に教えることに、生きがいを感じるようになりました。
そして美女がみは、その愛で村人たちを包んだので、きょうふの顔を見せることは二度とありませんでした。


そして、年に一度の祭りの日。
人びとが祝福して、かれら3人のかみがみを讃えようとすると、彼らはいいました。
「私たちでなく、この世界をつくり、わたしたちとあなたたちをつくった神さまを、賛美しよう。」

そして、村を去ってしまった巨人がみのことも想って、かれらは謳ったのです。

「わたしの上に主の御霊がおられる。
主が、貧しい人々に福音を伝えるようにと、
わたしに油を注がれたのだから。
主はわたしを遣わされた。
囚われ人には赦免を、
盲人には目の開かれることを告げるために。
しいたげられている人々を自由にし、
主の恵みの年を告げ知らせるために。」

そのころ、巨人がみは。「大深層」地底の牢屋の、面会室にいました。
かれは扉がひらく、重い音で振りかえると、入ってきた囚人に明るく笑いかけました。そして、ま新しい「ばいぶる」を手に、「見舞いに来たよ。」といいました。


時は西暦2007年。
パラレルワールドの裏のうら、ここヤンシノ界は神集島(かみつどいじま)で。

主の栄光は、こちらでも何一つ変わらず、愛と希望を与えていましたとさ。

<おわり>

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