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後藤 秀孝
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JAPAN
ハンバントタの再定住地域で
2007-02-02 Fri 21:59
スリランカ南部の海岸沿い、ハンバントタ県は2004年12月末に津波に見舞われて以来、ゆっくりとですが復興の道を辿っています。特に住居に関しては、海岸線から100mt(場所によっては200mt)の津波緩衝地域をはさんだ未開のジャングルを整地し、政府やら国際NGOやらが建設した住居が立ち並んでいます。現在こうした再定住地域にて、被災で住む家を失った避難民の方々が生活しています。建物の質としては、津波以前に被災者たちが住んでいた住居よりも、恐らく数段高いものでしょう。不便はありますが、水も、電気も使えます。私だったら「ラッキー!!」と言って、新しい暮らしを楽しむと思います。

しかし、被災者たちの実情は、私の想像をはるかに超えるものでした。

ほとんどの住民が、多かれ少なかれ家族・肉親の一部を喪(うしな)い、これまで従事してきた職を失い、更にこれまでの居住区を離れて、全く異なる環境での生活に大きなストレスを感じている、ということ。そしてストレスは、意欲喪失、家庭内不和、女性・子どもに対する家庭内暴力、アル中、ドラッグ依存、性的暴行、そんな症例として発露するそうです。

ある女性は、津波によって夫と二人の子どもを喪い、失望してずっと寝込んでいました。特に身体が悪いわけではありません。ただ生きる希望を失って、引きこもり、時間の大部分をベッドの中で過ごしていたのです。
またある女性は、失われた子どもが忘れられず、日がな一日海岸に座って、波頭を眺めていたそうです。
ある男性に至っては、日雇いで稼いだお金でアルコールに浸り、その後ドラッグに手を出し、トラウマや痛みを軽減しようとしますが、逆に自分自身を傷つけただけでした。

こうした方たちに共通したのは、新しく与えられた家も、庭も全く手入れをしておらず、荒れ放題に荒れていたことでした。だから、その人/家族の精神状態が、庭の状態となって周囲からもはっきりと見て取れる。そんな現場だったのです。

私たちはこの再定住地域で、収益向上につながる職業訓練と並行して、カウンセリングなど心のケアを行なっています。私たちの事業スタッフ、22~26歳の若い女性ソーシャルワーカーたちが初めて村に足を踏み入れた時は、荒れた家庭が方々に存在し、彼らの冷めた心、後ろ向きの思考を改善するのはとても困難に思われました。特に、スリランカも日本と同様「男性は強くあるべき、涙など言語道断」という「恥」文化の中、男性被災者たちにとって、女性と自分の苦悩や悲しみを共有するのは当初難しいことでした。また、地域内にシンハラ人とムスリム人の派閥ができ、村全体がばらばらで、相互扶助の精神など理解されなかったのです。

その溝を埋めるために、ソーシャルワーカーたちが費やした時間・エネルギーは計り知れません。話しかけても全く反応しない未亡人に忍耐強く接し、その喪失について少しずつ聞き取り、心のしこりを解きほぐしてあげたこと。赤ら顔で酒臭い男性宅にも足繁く通い、生活を再開するための動機付けをしたこと。いつもクラスに遅刻したり、引きこもって出てこない女性を誘って、努めて明るい話題で慰めたこと。

彼女たちの努力によって、少しずつ変化が現われました。

することを見つけた住民たちは、少しずつですが規則正しく授業に出席し、新しい知識を学び、他の被災者と話し合う機会も持つようになりました。家を掃き、庭を整え、雑然としていた家庭に清潔感が戻りました。また家族を喪い、孤独感を強めていた老人宅にも、こうした仲間の輪が交代で訪問し、民族の違いを超えてお互いに支えあうようになったのです。

物を造る喜び。野菜を育てる喜び。他人と痛みを分かち合う喜び。そうしたものを、若い女性グループが熱心に説き、ついに冷え切っていた村民の心に、暖かい火を取り戻したのです。
他人の闇を覗き込むことは、自分の中にその闇を招き入れることでもあります。
この細い肩に、どれだけ多くの重圧が、苦労が、悩みがのしかかったことでしょう。しかしそれを跳ね返してなお、白い歯を見せて明るく微笑む彼女たちは、事業を行なうJENの宝ですし、しいては村の、そしてスリランカの宝です。

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この記事のコメント
読んでて、不覚にも涙ぐんでしまいました。
あの当時は大々的に報道されましたが、時が経てばメディアの表面からは忘れ去れている、でも本当に傷ついた方たちにとっては、これからだ、ということを思い起こされました。そういう方々に仕えていらっしゃるごとうさんにも頭が下がります。
2007-02-03 Sat 02:23 | URL | Grace #tQ725RIE[ 内容変更] | top↑
Grace さん、訪問&コメント感謝です。

「トラウマに苦しむ人は、時計を二つもつ」と言うことを聞いたことがあります。一つは、普通の時計で、日々の仕事や、家事や、学校など、放っておいてもどんどん進んでしまうもの。

そして、もう一つは、津波(などの事件)が起きて、大切な物が失われた時間を指す時計。その時計は、2年経とうと、10年経とうと、はっきりと喪失の瞬間の時間を指し示していて、動かないそうです。

そんな被災者の方々に、私たちができることって、本当に限られています。しかし、主が私たちに手を差し伸べ、根気強く接してくださったように、我々も忍耐をもって、できることをするだけです。

でも、場所や役割や対象が違っても。私たちはみな一つの大きな目標に向かっているのですから。これからもお互いにがんばっていきましょう。

ごとう
2007-02-03 Sat 14:15 | URL | ごとう ひでたか #-[ 内容変更] | top↑
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